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こんな就業規則がダメな理由

更新日:2022年3月5日

労務という分野で地域を元気にするさざなみ社労士事務所の菊地です。


本日は就業規則について。経営者様とお話をしていて、まだその会社に就業規則がないという場合に、「就業規則?ネットからダウンロードすればいいよ。」とか「前の会社の拝借すればいいでしょ。」とおっしゃる方がたまにいます。


結論から先に言ってしまうと、「そのままではダメなので、ちょっと待ってください!」と私は言います。それはなぜなのか。

本日は、その理由について書いていきます。

私がこれまでの経験で関わらせていただいたのは、まだ設立したてでこれから従業員数を増やしていこうとしている企業様や、家族的な経営で5人ほどの従業員でずっとやっている企業様など、従業員数が10人に満たないというような会社が多くありました。


このような場合、会社は最初は就業規則を持たず、労働条件は個々の労働契約書の中でその内容を定める、というような流れが一般的じゃないかと思います。


就業規則について労働基準法には、

第89条 常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。

と定められているように、従業員数が10人未満の間は、作成・届出しなくてもいいことになっているからです。


もちろん10人に満たないうちから就業規則を持つことは大変いいことですが、はじめて従業員を雇うときの雇う側というのは、どんな風に働いてもらうか、人員に合うだけの仕事量があるか、すぐやめっちゃったりしないだろうか、などなど、手探り状態でやっているので、雇用に関して体系的なものを決めてしまうのはなかなか難しい感じがするのだと思います。


そういうこともあり、とりあえずはダウンロードしておけば今はいいんじゃない?とおっしゃるのです。


また、今はまだいいや、という状態でやってきたところ、急に人を増やさなければいけなくなり、ある時あっという間に10人を超えるかという状況になったり、助成金申請に就業規則の提出を求められたりして、提出期限も迫ってきて作っている暇がないからダウンロードすればいい、とおっしゃるケースもあります。


ダウンロードしたものを軸に作っていくのもいいのですが、最低限、手直しは必要です。どの会社にも共通で使える就業規則はまずないと、私は思っています。


それともう一つの要因として、小さい会社の労働契約は、従業員ごと個別対応していることが多いので、いったんそれぞれの条件を全部整理して体系化するというプロセスが必要になるからです。



大切なのは労働契約と就業規則の整合性


このようなプロセスを省いてしまうと、個々の労働契約と就業規則の間に乖離が出てきます。


ですから私は従業員が10人に満たない企業様に対してなら、「自社の実態に合っていない就業規則なら持たない方がいい。」と考えます。



実際に、労働契約書と就業規則の労働条件が違ってしまったことが争点になった場合、どうなるのか?

第12条 就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効となる。この場合において、無効となった部分は、就業規則で定める基準による。

これは労働契約法の内容ですが、つまりどういうことかわかりやすく言うと、労働契約書に定められている内容よりも良い条件の就業規則の定めが優先される、ということです。


例えば、月給制の従業員の休日数。労働契約書に書かれている休日数より就業規則で書かれている方が多い日数だった、なんてことになると、同じ給与で休日数が多い方が日あたりの給与額が多いということになり就業規則の方が良い条件というふうに考えられます。この場合、労働契約の定めは無効と判断されかねません。


それぐらい就業規則の力は大きい


就業規則というのはそれぐらい、会社にとって適当に考えてはいけない重要性のあるものなのです。時間がない、とうっかり作ってしまった就業規則でトラブルになってしまっては大変です。


また、就業規則は一度作成したものを変更する場合、その変更により、会社側が一方的に労働条件を従業員の不利益に変更することは、原則的にはできません。ですから、先々のことを考慮せず、最初からいろいろ盛り込みすぎるのも危険です。積極的に制度を盛り込む場合にも、労務リスクや運用面で可能かどうかまで予測して設計していきたいものですね。

 

就業規則を持たず、これから従業員を増やしていきたいとお考えの企業様は、できるだけまだ人数の少ないうちから、作成を計画されてみてはいかがでしょうか?やはり、作成にはそれなりの時間を要します。


弊所では、就業規則のご相談を受けて作成、または変更ということになりますと2~3ヶ月くらいかけて実施させていただきます。※内容によります。


この間、現状のヒアリングからはじめてどのような骨組みで組み立てていくのか、たくさんお話を伺うことになります。業種・業態によっても内容が本当にさまざまで、またそれ以外にも経営者様自身のお考えや想いが伺える時間となるでしょう。


就業規則は、法的なリスクから会社を守るものとも考えられますが、それだけでなく、企業様の想いやビジョンがそこかしこに散りばめられているようなものをつくれたらいいな、と思っています。



最後までお読みいただきありがとうございました。


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