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男性の育児休業を推し進める意味について

更新日:2022年2月22日

労務という分野で地域を元気にするさざなみ社労士事務所のきくちです。


今年1本目の記事は、今年法改正される育児介護休業法でも推進される男性の育児休業について書いていきたいと思います。


今回、賛否の出やすいテーマでもあり躊躇もしたのですが、このことについて多くの人に知っていただきたいと思いました。ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

今年改正の育児介護休業法

今年4月から段階的に育児介護休業法が改正されます。今回の改正は、従来の育児休業について対象者の要件緩和や分割取得でさらに育児休業が取得しやすくなるといったことがありますが、それとは別に、男性専用の育児休業が創設されるという点が大きなポイントです。それらにより男性の育児休業を推し進めることが盛り込まれています。


細かい内容は割愛して男性専用とは、産後8週間に4週間とることができる、しかも2回に分割することも可能な「産後パパ育休」と呼ばれる育児休業のことです。


これは、パパ用については、産後すぐのまだ母体が大変な時期、必要な時に必要な日数の休みを取りやすくしようという意図で作られたと考えられます。「産後パパ育休」のあとさらに分割して原則1歳、最長2歳まで休業を取得することもできます。(※従来通り、最初から一括して1歳までの休業を申し出ることもできます。)


何で変わるのか

従来の育児休業制度というのも、時代にあわせ法改正を重ねてきているので、ややこしいものになっていました。そこへ、今回の改正でさらに難しくなります。人事担当者目線で考えても、細切れで複数回休んだ場合の、育児休業給付金申請や休業中の社会保険料免除の手続き、給与の日割り計算など、非常に煩雑になります。対象者への制度説明も簡単ではありませんね。


そうであっても今回のように法律を変えるというのには、今までの制度が、男性が育児休業をとるという実状に「どこか合っていない」という実態があったからではないでしょうか?そして、実態に合った制度にしていこうという趣旨の変更だと言えるのではないでしょうか。

これまでの男性の育児休業の実態って?

以前、育休をとっている男性の一日の生活を取材しているテレビ番組を見ました。1年の休業を取っているので時間がたくさんあり、育児は手伝うものの資格取得やスキルアップの時間に充てている、と男性は話していました。奥さんも家で育児をしている状態なので、まぁそうなってしまうのでしょう。


しかし実際そのようなケースは少数派で、多くの場合、男性の育児休業は非常に短い期間となっています。令和2年度の雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得者のうち5日未満の休業を取った人の割合は「28.33%」だったそうです。


男性の育児休業取得率は近年大幅に上昇しています。しかし、そのうちの多くは年末年始やゴールデンウィークの休みと大して変わらないような長さの休業なのです。単に、取得率が上がるだけでなく、意味ある休業であってほしいと思います。


キーワードは「分割取得」

では、男性の育児休業を推し進める意味ってなんなんでしょうか。


これまで長い間育児休業に関わる仕事をしてきましたが、会社様側から「(女性の)育児休業が長すぎて困る」という話を嫌というほど聞いてきました。(※現行で、子供が保育園に入れない場合、1歳までの休業を1歳6カ月まで延長できる、さらにその先も保育園に入れない場合、2歳まで延長できるということになっていて、延長する方が多いからです。)


お気持ちもわかりますが、その一方でこう思うのです。その女性一人の力で保育園に入れない問題をどうにかできるでしょうか?ついでにもっと言えば、保育園問題は入れるか入れないかだけでなく、入ったあと、子供がうまくなじめるだろうか、とか、すぐ風邪をひいて復帰した仕事も休みがちになってしまうのではないか、などその先があり、本人もどうするのが一番いいのか必死で考えています。


そんなことを以前から思っていましたが、今回の改正で私に小さな衝撃をもたらしたものがあります。厚労省の育児介護休業法改正を伝えるリーフレットのある一部分です。



これは母親と父親で共に育児休業を取得する場合のモデルケースをわかりやすく図にしているのですが、母親の産休のあと、または1歳のあとに、母と父で交代で休業をするという事例です。先ほどから「分割取得」というワードが多く出てきていたのは、父母で交代して休むということが想定されていたからなんです。必要な時に必要なだけ休める、ということだけではなかったんです。


これは、結構あっさりとかなりセンセーショナルなことを言っていると私は思うのですが、みなさんはどう感じますか?父親が1歳ほどの子供を一日中一人で家でみる期間があるならば。父親からは「正直、仕事してる方がよっぽど楽だろ・・」なんて声が聞こえてきそう。でも、考えた側は本気でこのモデルを想定したのです。たしかに女性の育児休業が長くなってしまう問題の一策にもなります。


実際、どう利用されるかはわかりませんが、このようなモデルが考えられたことに、正直私はオドロキました。こういうことを求めてもいい時代になるかもしれないんだ、と。


こう考えるてみると、これまで夫婦間の子育てと仕事の両立について、母親が多くを背負いすぎていたんじゃないかと思います。(もちろんいろいろな家庭があるのですべてとは言いません。)


そこに本当は大きな理由はなくて、「お母さんはそういうものだから」それくらいのことなのかもしれません。多くの男性も「そもそも育休とれるなんて思ってもいない」とか「発想自体がない」ということなのかもしれません。そうじゃなく、「男がそういうことでは勝ち残っていけない」というようなことを思っているならば、本当にそうだろうか?と疑ってみてもいいのかもしれません。いろいろな考え方・価値観があった方がむしろ、組織が良くなるのかもしれません。母親も「パパじゃ心配で任せられない」と必要以上に心配しなくてもいいのかもしれません。頼まないからやれないだけかもしれません。

 

男性の育児休業を推し進める意味がもしあるのだとすれば、男女それぞれなんとなく背負ってきたもの、それをいったん疑ってみる機会になること、そのことが組織や社会全体が良くなる機会になるかもしれないということだと私は思います。(なんだかとても抽象的な表現になりました。。)


それにしても時代や人の意識はどんどん変わりますね。もしかしたらもしかして、リーフレットのモデルケースが当たり前になる未来が来ないとも言えません。


今回の改正について、だけ当事者なく、ぜひ色々な人に知っていただきたい内容でした。



最後までお読みいただきありがとうございました。








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